事実を伝えること

記憶も記録もあてにはならない 記憶だからあてにならないとか 記録だからあてになるとか そういうものではない 記憶は 何が起こったのかでも 何が起こらなかったのかでもなく そうだったかもしれないという そして そうでなかったかもしれないという 可能性なのだ 記録は 何か起こったことについて 記録する人がこうであったらいいなということを 期待を込めて書いたもので 不完全で間違いだらけの 人が記したものなのだ 起きたことを起きたこととしないで 起きなかったことを起きたことにして 起きたことと起きなかったことの 境界をあいまいにしてしまう 不完全な記憶 未完成な記録 永続しない記憶 永久に残らない記録 記憶や記録でできあがった歴史とか 記憶や記録に頼った判断が 正しいわけはない 記憶も記録も事実ではない